勉強会/セミナー

『猫と高齢者 第2弾』の講演会に行ってきました(その2)

猫と高齢者 講演会|ネコアパートメント

『猫と高齢者 第2弾』の講演会に行ってきました(その1)』の続きをかきます。
前回の記事は下記リンクからどうぞ。

現在の犬と猫の販売シーンとは?

引き続き、朝日新聞記者の太田匡彦さんによる、生体販売の流通における問題点について語られたことをかいていきます。

猫と高齢者 講演会|ネコアパートメント

販売数は?

この数年で、犬と猫の「販売数」はどれくらいなのでしょうか?
2015年のデータ(自治体集計を朝日新聞が合算したもの)によると、犬がおよそ69万頭猫がおよそ15万6千頭となっており、これは前年2014年から増加しています。

2014年は犬およそ61万頭、猫およそ13万3千頭。

販売業界の現場の声は?

この数年で、犬と猫の卸価格、販売価格ともに上昇しているそうです。とくにネコノミクスと言われる猫ブームにより、スコティッシュをはじめとする人気の猫にはかなりの高値がつくこともあるとか。またゴールデンウィークなどイベントに応じて価格が高騰するそうで、まさに物を扱う小売業と同じといえます。

殺処分数よりも多い死亡数

驚きだったのは、流通過程で死亡してしまう犬や猫が多いことでした(T_T)
繁殖から小売までの過程での死亡数は、2014年度は2万3181匹、2015年度は2万4954匹とのことです。犬だけでみると、なんと全国の自治体による殺処分の数よりも多いということでした。
とあるペット店では仕入れ頭数に対して死亡率が(犬)7.99%、(猫)4.39%とのことで、これは異常に高いと思いますがどうですか?店に到着した時点ですでにぐったりしているなどもあるそうです。

D犬リストとは

業界には「D犬」リストと呼ばれるものが存在するそうです。それは、死亡した犬の状況をまとめてあるリストのことだそうで、それによると例えば2016年8月では230匹の犬が死んでいるそうです。さらに、死因を見ていくと、仕入れにおける過程で「感染症」が広まっている状況もみてとれるということでした。(パルボなど)流通
までの環境に疑問を感じざるをえません。
デリケートな子犬や子猫を扱う場合は温度調節に気をつけ、感染症対策もし、マメにケアをしてあげるのが必要ですが、流通過程においてそれが徹底されていないのなら、ここは具体的にどうしなければいけないか、明確な基準を設けるべきであり、それに従わない場合は厳しい処罰を用意してほしいと思います。

猫と高齢者 講演会|ネコアパートメント

高齢者はペット販売のいいお客さん

いま、ペットと暮らす高齢者や独居世帯の方が、病気で入院したり、亡くなられたりしてペットの行き場がなくなるケースが多発しています。また、自治体の愛護センターにも高齢者からの相談や持ち込みが増加している時代で、高齢者とペットのことは社会問題となっています。

高齢者とペットの問題については下記リンク先の記事でもまとめていますのでぜひ御覧ください。

サプリメントペットとは?

そうした問題点がありながら、今ペット業界では高齢者にペットを購入してもらおうとする動きが大きいと聞きました。しかも「犬や猫と暮らすと健康になりますよ」というサプリメント効果をうたって販売しているときき、驚きました。

たしかに犬であれば毎日散歩に出かけたり、出会う人とコミュニケーションをとることで良い効果があることは否定しませんし、高齢者や独居世帯のかたが犬や猫と暮らすことで精神的に安定し充実した暮らしを実現できることは、その通りだと思います。

しかし、ペットショップで販売するということは「子犬」や「子猫」を高齢者に飼育させることになります。猫であれば20年は生きますから、飼い主が60歳を過ぎていれば最後までしっかり面倒をみれるかどうか、そこは疑問が残ります。

お金を払えば買えてしまう

保護団体や一部の自治体から動物を譲渡して貰う場合、例えば65歳以上は本人になにかあったときペットのお世話をしてくれる後見人の承諾が必要になることがあります。ペットショップでは、そうした契約はなくお金を支払えば誰でもいくつであっても、子犬や子猫を購入することができてしまいます。

猫と高齢者 講演会|ネコアパートメント

次の飼い主さえいればいい?オーナーチェンジというストレス

高齢者にかぎらずやむをえない事情で突然ペットと暮らすことができなくなる可能性は誰にでもあります。では、あらゆるケースにおいて次の飼い主(里親)が決まればそれでいいのでしょうか?

東大大学院獣医動物行動学研究室の竹内ゆかり教授の証言によると、犬の精神疾患の1つである分離不安の原因として、飼い主のライフスタイルの変化があげられるそうですが、その意味でいうと、飼い主自体が代わってしまう「オーナーチェンジ」は大きな変化といえとくに高齢者をはじめ在宅時間が長くペットと長い時間を過ごす場合にはより分離不安になりやすいそうです。

できるだけ、オーナーチェンジがないような暮らしができる計画をたてることがのぞまれますね。

総括:太田さんのお話をきいて

長い間、こうした問題に真摯に取り組んでこられた太田さんのお話はデータに基づいた多くの資料とともにたいへん説得力があり、それだけにまだまだ過酷な現状を知ることとなりました。ペット流通における問題はほんとうに改善しなければいけないことが多くあるなと再認識しました。

猫と高齢者 講演会|ネコアパートメント

「猫を看取るのは誰か?」獣医師・保護動物アドバイザー西山ゆう子さん

次に、西山先生のお話をお聞きしました。

譲渡?移動?

先生のお話で印象だったのは「保護活動のガイドライン」が必要ではないのか?という問題提起でした。たとえば行政からの保護団体への動物引取りは「譲渡」扱いになっていますが、それは最終的に生涯飼育できる家にいく「譲渡」とはわけて「移動」とするべきではないか?

また、保護団体で面倒を見る場合に大きな病気やケガをした子がたまってしまいその介護や看病で多大なマンパワーをさくことになる、たとえば安楽死など、獣医師さんとの連携で保護動物医療のガイドラインをつくったりもしてはどうか?など、獣医師さんならではの視点からの問題提起は新鮮でした。

保護活動に必要なこと

とある保護団体さんで突然ひきつけを起こした猫の動画もみました。痙攣してガタガタと暴れ完全に我を失っている猫の様子をみてスタッフさんがどうしていいのか分からない状況がそこにはありました。

わたしも仲間の皆さんとともに猫の医療について話し合います。素人ばかりですから調べながら進めています。どうしてもわからないことは連携している病院に相談しています。かわいそう、の愛情だけで保護活動をしていても、専門的な知識がないと割を食うのは動物たちなのです。

わたしの尊敬する猫の先輩方は、獣医さんもびっくり?の知識にあふれています。多少のことなら何でも教えてもらえますし、的を得ています。わたしもこうした活動をする限りは、扱う動物のことをちゃんと勉強しなければならないな、と強く感じました。

最後に

最後はパネルディスカッションがありました。そこでは太田さんから「感染病の蔓延原因となりうる、不特定多数の犬や猫が集まる競り市は、動物愛護法の観点から禁止することができるのではないか?」という指摘がありました。

ペット共生可能老人ホーム「れんげハイツ井高野」

当日配布された資料のなかに、ペットと暮らすことができる老人ホームのパンフレットがはいっていました。

大阪市東淀川区にある「れんげハイツ井高野」さんです。
24時間対応の訪問看護ステーションと連携しており、重度医療も対応可能。そしてペットと共生できる部屋が用意されています。ただし、77室中ペット可のお部屋は5室とかなり少なめ。それでも、まだあるだけ良いと捉えるか?(^^;)

パートナーを亡くしたり色々な事情で一人暮らしをされている方にとって犬や猫は家族そのもの。お互いの幸福のため、できるだけいつまでも一緒に暮らせる選択肢が増えることが望まれますね。

最後に

とっても充実した内容のセミナーでした。

ペットライフネットの吉本さんありがとうございます!

主催者:ペットライフネット

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